🍎第2章:添加物と脳の関係
ーちょっとの積み重ねが
子どもの心に影響を与える —
… 脳がよろこぶ食の選び方を知ろう
天然添加物というやさしい選択を …
スーパーで見かけるピンクやブルーのお菓子。子どもたちは目をキラキラさせて手を伸ばしますが、少しだけなら大丈夫と思っていませんか? そのカラフルさを作っているのは合成着色料です。こうした食品の多くには、味や色、保存性を良くするための食品添加物が使われています。
もちろん、添加物の安全性は確認されていますが、最近の研究では、量や組み合わせによっては脳の働きに影響する可能性が少しずつ報告されています。特に注目されている成分には、人工甘味料(アスパルテーム、スクラロースなど)、合成着色料・保存料、トランス脂肪酸、リン酸塩などがあります。
1. 合成着色料・保存料と多動性
イギリスのサウサンプトン大学の研究(2007年)では、特定の合成着色料と保存料の混合物を摂取した子どもたちにおいて、注意力の乱れや多動性の増加との関連性(相関関係)が報告されました(Lancet誌掲載)。この結果は、これらの添加物が神経刺激を強め、子どもの行動に影響を与える可能性を示唆しています。
参考:
- タイトル: サウサンプトン大学における食品添加物と多動性に関する研究について(2008年)
出典:厚生労働省
URL:https://www.mhlw.go.jp/shingi/2008/04/dl/s0411-8e.pdf
一方で、欧州食品安全機関(EFSA)などの公的機関はこの研究のみをもって安全基準を変更する根拠には不十分と判断しています。これは、多くの研究が関連性を示唆するに留まり、直接的な因果関係までは明確でないためです。特定の添加物にリスクを感じつつも、科学的根拠に基づいた冷静な判断と慎重な議論が求められています。
🍬人工甘味料
ーだます甘さ”に脳が混乱?ー
カロリーゼロの飲み物に使われる人工甘味料は、甘さを感じても実際には糖が入ってこないため、脳が一時的に混乱することがあります。砂糖ゼロだから安心と思いがちな人工甘味料ですが、脳は甘い味をエネルギーが入ってきたと誤認します。
実際に糖が入らないことで脳が一時的に混乱し、その結果、エネルギー不足を感じやすくなったり、イライラや集中力低下が起きやすくなると考えられています。さらに、人工甘味料によってドーパミン系が刺激されると、もっとほしいという報酬依存行動が生じやすくなります。また、腸内環境が乱れることでセロトニン分泌にも影響し、感情の安定性が低下するともいわれています。
南カリフォルニア大学(USC)のキャスリーン・A・ペイジ博士の研究チームは、fMRIを用いた実験で、人工甘味料スクラロース摂取時に視床下部の活動が活発化し、空腹感が増すことを確認しました
参考:
- 著者: Kathleen A. Page ら
掲載誌:Nature Metabolism
URL:
https://pubmed.ncbi.nlm.nihs.gov/40140714/
🍬トランス脂肪酸・リン酸塩
ー 脳と血管に小さな負担ー
トランス脂肪酸は、油を長持ちさせるための人工的な脂質で、スナック菓子や揚げ物に含まれます。これは血管を硬くしてしまう作用が指摘されており、脳は血流で栄養を受け取るため、血管の柔軟性が下がると脳への栄養供給が影響を受け、エネルギーが不足しやすくなる可能性が指摘されています。
参考:
- 著者: Lopez-Garcia E et al.
掲載誌: The Journal of Nutrition (2005)
URL:
Consumption of trans fatty acids is related to plasma biomarkers of inflammation and endothelial dysfunction - PubMedTrans fatty acid intake has been associated with a higher risk of cardiovascular disease. The relation is explained only...
また、ハムやソーセージなどに使われるリン酸塩は、カルシウム代謝を乱し、カルシウムを体外に排出してしまうため、イライラしやすい、感情が安定しないなど、集中力や感情面に影響することが研究されています。
参考:
- 著者: Kalantar-Zadeh K. et al.
掲載誌: Nutrients (2023)
URL:
Industrial Use of Phosphate Food Additives: A Mechanism Linking Ultra-Processed Food Intake to Cardiorenal Disease Risk?The consumption of ultra-processed food (UPF) keeps rising, and at the same time, an increasing number of epidemiologica...
2. 超加工食品と心の健康
袋を開けるだけで食べられる超加工食品は、見た目や味を安定させるために多くの添加物を使用しており、精製油や糖分も増えがちです。カップ麺やスナック菓子などの超加工食品を多く摂る食生活は、脳や心の働きにも関係すると言われています。
例えば、ハーバード大学の研究では、超加工食品の摂取量が多い人ほどうつ傾向が約30%高いと報告されています。また、フランスの研究でも、摂取量が多いほど認知機能の低下が見られる傾向があります。
参考:
- 論文タイトル: 超加工食品の摂取とうつ病リスク
著者: Liu W et al.
掲載誌: JAMA Network Open (2023)
URL:
https://www.neurology.org/doi/10.1212/WNL.0000000000209432
これらの背景には、腸脳相関の乱れが関連していると考えられています。超加工食品が腸内環境を悪化させることで、脳内のセロトニン(気分を安定させる神経伝達物質)の減少を引き起こし、結果として気分の落ち込みなどにつながる可能性が研究で示唆されています。
ただし、これらはあくまで食生活と心の健康に関連があるという報告であり、直接的な因果関係が証明されたわけではありません。睡眠、運動、ストレスなど、生活全体のバランスも大きく影響します。
3. 腸と脳のつながり
ー腸脳相関の話ー
近年、腸と脳はつながっているという腸脳相関の考えが注目されています。2023年の京都大学の研究では、3〜4歳児の腸内細菌のバランスと感情の安定との関連が報告されました。つまり、食べ物が腸の環境を変え、それが子どもの心や集中力に関わっている可能性があるのです。
- 著者: 藤原秀朗氏、明和政子教授ら
掲載誌: Microorganisms (2023年9月6日オンライン掲載)
URL:
Altered Gut Microbiota Composition Is Associated with Difficulty in Explicit Emotion Regulation in Young Children | MDPIExecutive function (EF) consists of explicit emotion regulation (EER) and cognitive control (CC).
⚖️科学的根拠に基づく
バランスの取れた食選択の推奨
食品添加物に関する研究結果に過度に不安を抱くのではなく、科学的知見に基づいた冷静な判断と、日々の小さな選択が子どもの心と脳の健康を守ります。
1.バランスの重視と多様な摂取
多くの添加物は安全性試験を経て認可されています。リスクを知りつつも、確実な害ではないことを理解しましょう。極端な食制限に偏らず、複数の専門家の意見を参考にします。極端な制限よりも継続できるバランスを意識しましょう。手作りを増やし、加工食品の割合を少しずつ減らすことから始めましょう。
2. 素材由来のやさしい選択肢を選ぶ
加工度の高い食品(超加工食品)に、脳への影響が示唆される添加物が多く使われていることから、天然物に近い食品を選ぶという視点を持つことが、脳に優しい食の選び方につながります。
🔹 天然添加物という視点
天然添加物とは、自然界の動植物から抽出・加工して作られた添加物のことです。例えば、海藻から作られる寒天や、レモンなどに含まれるビタミンC(酸化防止剤)など、食経験の長い素材が元になっています。現在の法律では、長年の使用実績があるこれらは主に既存添加物として扱われ、食品の色やとろみ、品質を保つ重要な役割を担っています。
🔹 天然=安全ではない理由
天然だからといって絶対的に安全というわけではありません。すべての食品添加物は、天然・合成を問わず、国によって厳しく安全性が評価され、使用基準が定められています。特定の添加物を過度に恐れるのではなく、表示を理解し、バランスを重視することが大切です。
3. 加工度の確認と素材由来の優先
食品ラベルを確認し、人工甘味料・保存料・着色料の少ないものを選びましょう。ゆで卵、焼き魚、フルーツ、ナッツなど、素材そのままの食品をおやつに取り入れるのもおすすめです。
🍃 天然添加物との上手な付き合い方
食品を選ぶときは、天然由来かどうかだけにこだわるのではなく、食品表示を確認して、添加物がどんな目的で使われているのかを理解することが大切です。
特定の食品添加物を過度に避けるよりも、日々の食事で多様な食品をバランスよく取り入れることが、健康を守る基本になります。

🌸 今日からできる脳に優しい習慣
子どもの考える力と感じる心を育む新しい親子の対話。日常の小さな一コマこそが、未来を生き抜く健やかな脳と心の大きな成長の糧となります。
- 🛒お買い物の時:この色、本当に食べ物の色かな?と一緒に考える
- 🍪おやつタイム:今日は何の気分?と聞き、体が欲しがるものを選ぶ
- 🌙夕食の後:今日の気分はどうだった?と話し合う
🌿まとめ
食品添加物や超加工食品は、生活を便利にしてくれる一方で、脳や感情に負担をかける可能性もあります。ただし大切なのは、避けることよりも知って選ぶこと。
日々の中で、原材料表示を一度見てみる、おやつを手作りにしてみるなど、ほんの小さな工夫が、子どもの集中力や気持ちの安定を支える第一歩になります。
🍇次回予告
次回は、腸と脳のつながり(腸脳相関)について。
実は腸内環境が、感情や行動にまで影響することがわかってきました。心を整える食事を、最新研究と家庭でできる工夫から紹介します。



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