…食べものが心を左右する?…
🍋 脳・ホルモン・腸がつくる食後の心の波
食べものは心に直接は届かないように見えて、実際には脳やホルモン、腸内細菌を通じて、感情や行動を強く左右しています。そして、その仕組みを理解するとなぜ食べたもので気分が変わるのか?という不思議が見えてきます。
1.食品報酬系とドーパミン
ーなぜジャンクフードにハマるのかー
人間の脳は、快楽を感じるとドーパミンという神経伝達物質を分泌します。これはまたあの快感を得たいと学習させる働きを持っており、食べものの中でも特に糖・脂肪・塩分が多い食品は、このドーパミンを強く刺激します。そのため、ジャンクフードを食べると脳が快感を記憶し、また食べたいと思う気持ちが強まるのです。これは意志の弱さではなく、脳の報酬系という仕組みが働いている結果といえます。
アメリカ・ミシガン大学のアシュリー・ギアハート氏らの研究では、チップスやソーダなどの超加工食品は依存症と同様の行動を引き起こし、研究によって多少の差はありますが、成人の約14-20%、子どもや青少年の約12-15%が超加工食品への依存基準に当てはまると報告されています。つまり、食べものが脳の報酬システムをハイジャックしてしまうということです。だからこそ、やめられないと感じるのは意志の力不足ではなく、脳の自然な反応なのです。この仕組みを理解することが、無意識の過食を防ぐ第一歩になります。
- 論文タイトル:Ultra-Processed Food Addiction: A Research Update
著者:LaFata EM, Allison KC, Audrain-McGovern J, Forman EM
掲載誌:Current Obesity Reports, 2024年5月
主要な内容:超加工食品依存症の世界的有病率は成人14%、青少年15%と推定される
URL:
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC11150183/ - ミシガン大学の記事
タイトル:Identifying some foods as addictive could shift attitudes
内容:超加工食品依存症は成人の14%、子どもの12%に発生すると推定される
URL:
https://record.umich.edu/articles/identifying-some-foods-as-addictive-could-shift-attitudes/
2.血糖値の乱高下と感情の起伏の関係
次に注目されているのが、血糖値の変動と感情の関係です。食後、血糖値が急上昇すると、体はインスリンを大量に分泌してそれを下げようとします。すると、今度は血糖値が急降下し、脳がエネルギー不足と感じてイライラ、不安、眠気などを引き起こします。これを血糖値スパイクといい、感情や集中力の乱れを招く要因になります。
イギリス・キングス・カレッジ・ロンドンの研究では、低GI(血糖値をゆるやかに上げる)食品を摂った人のほうが、気分の安定や集中力が高かったという報告もあります。つまり、食後の気分の波を抑えるには、血糖値を急に上げない食べ方が大切なのです。
- 論文タイトル:Glycaemic index and glycaemic load of breakfast predict cognitive function and mood in school children
内容:低GI食品が学童の認知機能と気分安定に効果的であることを実証
URL:
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21736777/
3. 人工甘味料が脳に与える混乱
カロリーゼロだから大丈夫と思いがちな人工甘味料にも注意が必要です。脳は甘さを感じると糖が入ってくると予測して準備をします。しかし実際には糖が入ってこないため、脳が混乱し、集中力や自己コントロール力が一時的に低下することが報告されています。
アメリカ・南カリフォルニア大学のケイティ・ペイジ氏らの研究では、スクラロースの摂取は脳を混乱に陥らせ、誤った空腹信号を発信させる」ことが示されました。つまり、甘さを感じてもカロリーが入ってこないミスマッチが中枢神経系に疲労と混乱を招き、結果として感情や集中力といった高次脳機能の不安定さにつながる可能性があります。
参考:
- Kathleen A. Page 博士率いる University of Southern California(USC)チームの研究では、ゼロカロリー甘味料の一種である Sucralose(スクラロース)が、脳の間脳下部(視床下部)において活動を増加させ、空腹信号・摂食欲を高めることが明らかになっています。
URL:
Keck School of Medicine of USC+2PsyPost – Psychology News+2この研究では、甘さを感じてもカロリーが入ってこないミスマッチが脳を混乱させ、集中力やコントロール力低下に繋がる可能性が指摘されています。
URL:
ABC7 Los Angeles+1
4.腸内環境が感情に与える影響
最近の研究では、腸と脳が双方向で密接に連携している腸-脳軸(Gut-Brain Axis)の働きが明らかになっています。腸内環境が悪化すると、気分や感情を司る神経伝達物質(セロトニンなど)の生成に影響が及び、気分の落ち込みや不安といった情動の不安定さにつながることが分かっています。
実際、幸せホルモンと呼ばれるセロトニンの約90%は腸で産生されており、腸内細菌のバランスが直接的に感情の安定に関与しています。つまり、心の安定には、腸内細菌叢のバランスを整える食生活が欠かせません。発酵食品(プロバイオティクス)や食物繊維(プレバイオティクス)を意識的に摂ることで、腸から心を支えることが可能です。
参考:
-
「Microbiota–gut–brain axis and its therapeutic applications」では、腸で約90%のセロトニンが産生されているという記述があります。
URL:
Nature+1 -
「Regulation of Neurotransmitters by the Gut Microbiota and Effects on …」というレビューにおいても、「人体のセロトニンのうち約90%は主に腸の腸クロマフィン(enterochromaffin)細胞で合成される」と報告されています。
URL:
PMC+1 -
また、ハーバード・ヘルス・パブリッシングの記事でも、実際に体内のセロトニンの約90%が消化管で作られていると推定されると説明されており、腸から脳(心の状態)への影響が示唆されています。
URL:
health.harvard.edu
URL:
https://www.newsweekjapan.jp/stories/technology/2022/01/post-97943_7.php

🌿まとめ
食べものは心に直接は届かないように見えて、実際には脳やホルモン、腸内細菌を通じて、感情や行動を強く左右しています。 腸を整え、栄養をバランスよく摂り、食べ方を少し見直すだけで、
・イライラしにくくなる
・集中力が上がる
・気持ちが安定する
といった変化が現れることも少なくありません。 つまり、食を整えることは、心を整える第一歩なのです。
🍇次回予告
次回は、栄養学の視点から脳を育てる食材と避けたい成分について、どんな栄養が脳の発達や感情の安定に役立つのか、日々の食卓でできる工夫とあわせてお伝えします。



コメント